十川眼科大町院
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トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)とは?|眼圧をしっかり下げる緑内障手術を眼科専門医が解説

2026.06.03コラム

緑内障は、日本における失明原因の第一位の病気です。

多くの方は点眼治療でコントロールできますが、

「点眼治療を続けても視野障害が進行している」
「もっと眼圧を下げる必要がある」

このような状況では、緑内障手術が必要になることがあります。


緑内障手術にはさまざまな方法がありますが、 「トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)」は緑内障手術の中で最も強力に眼圧を下げることができる手術になります。

この記事では、

  • トラベクレクトミーとはどんな手術か
  • どのような方が対象になるのか
  • メリットと注意点
  • 当院での取り組み

について、旭川市の眼科専門医が解説します。


監修:十川眼科大町院 院長 中林征吾(日本眼科学会認定 眼科専門医、医学博士)



1. トラベクレクトミーとは?
2. なぜ眼圧をしっかり下げる必要があるのか
3. 手術のメリット
4. 手術の注意点・デメリット
5. 当院のトラベクレクトミーへの取り組みと手術成績
6. まとめ

1. トラベクレクトミーとは?


トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)は、眼の中で作られる房水を眼球の外へ流して眼圧を下げる手術です。
現在、緑内障手術の中で最も強力に眼圧を下げることができる手術になります。

点眼治療やレーザー治療、その他の緑内障手術をしても十分な眼圧下降が得られない場合、 または視野障害の進行が抑えられない場合に適応となります。


手術の具体的な方法ですが、 目に小さな穴をあけて、目の中の水を眼の外に流し、新たな排水のしくみを作ります。 結膜という白目の皮のような組織を利用して、上まぶたに隠れる場所に貯水池のような白目の膨らみを作ります。


2. なぜ眼圧をしっかり下げる必要があるのか


緑内障で視神経と視野を守るために、現在確実に証明されている治療は眼圧を下げることです。
眼圧が非常に高い方や、進行した緑内障の方では、「眼圧をすこし下げる」だけでは不十分なことがあります。


レーザー手術やMIGS(低侵襲緑内障手術)では十分な眼圧下降が得られない場合、 視野障害の進行が止まらない場合にトラベクレクトミーが必要になることがあります。


3. 手術のメリット


  • 大きな眼圧下降効果が期待できる
  • 眼圧変動を抑えやすい
  • 点眼本数を減らせることが多い
  • 進行した緑内障にも対応できる

特に眼圧変動を抑えることは、視野障害の進行を防ぐうえで重要と考えられています。


4. 手術の注意点・デメリット


一方で、メリットだけの手術ではありません。


  • 丁寧な術後管理が重要
  • 頻回の通院が必要になることがある
  • 低眼圧などの合併症が起こることがある
  • 追加処置が必要になることがある

手術そのものだけでなく、術後の管理まで含めて治療と考える必要があります。


また、手術後はしばらく見えにくくなることもあります。視力が安定するまでは長くて3か月くらいかかります。
また、すぐに起こることはまれですが、年月が経つにつれて2%程度で感染症の危険もあります。

白目の組織を利用するため、白目の状態が悪いと手術がうまくいかないこともあります。


5. 当院のトラベクレクトミーへの取り組みと手術成績


当院の院長は、大学病院勤務時代からトラベクレクトミーを多数執刀してきました。
大学病院勤務時代から現在までに、約400件のトラベクレクトミーを執刀してきました。 その他の緑内障の外科的手術やレーザーの手術も含めると、1,000件以上の緑内障手術を行っています。


近年はMIGSなど低侵襲手術も普及していますが、 進行した緑内障では今なおトラベクレクトミーが重要な役割を担っています。

当院でも、初期ではない視野障害の緑内障の方で、 しっかりと眼圧を下げなければならない患者様にはトラベクレクトミーをご提案しています。


当院では2023年10月に開院して以来、2026年5月までの2.5年間で31眼のトラベクレクトミーを行っています。
手術件数としてはそれほど多くはありませんが、緑内障の方にすぐに行う手術ではありません。 非常に高い眼圧の方や、複数の緑内障の点眼薬を使っても視野障害が進行する方に行います。


 当院でのトラベクレクトミーの治療成績


当院でトラベクレクトミーを受けられた患者様では、 手術前の眼圧は平均29.6 mmHg、 平均4.0種類の緑内障治療薬が必要な状態でした。


手術後の平均経過期間は10.7か月です。 平均眼圧 9.7 mmHg、平均0.5種類の点眼薬まで低下しており、 多くの患者さんで眼圧を大きく下げることができています。


また、手術前には複数の点眼薬が必要だった方でも、 手術後には点眼薬を減らしたり、点眼が不要になったりするケースが多くみられました。


以下は、術後期間での平均眼圧です。


時期症例数(眼)平均眼圧 (mmHg)点眼種類
術前3129.64.0
1か月318.60
2か月288.10
3か月249.10
4か月239.50.04
5か月229.80.09
6か月229.20.20
9か月2010.20.40
12か月1610.80.40
18か月910.90.44
24か月49.00.50

(※病型の内訳は、原発開放隅角緑内障が16例、落屑緑内障が9例、正常眼圧緑内障が5例、血管新生緑内障が1例)

当院は開院してまだ2.5年のため、術後2年まで経過を追えたのはわずか4眼ですが、平均眼圧は10 mmHg前後で維持されており、 長期的にも良好な眼圧コントロールが得られています。

 正常眼圧緑内障の方への手術


緑内障の中には、眼圧がそれほど高くないにもかかわらず視野障害が進行する「正常眼圧緑内障」があります。


当院では、点眼やその他の治療を行っても視野障害が進行する正常眼圧緑内障の方にもトラベクレクトミーを行っています。


今回の31眼のうち、点眼を最大限に使用して術前眼圧が20 mmHg以下であった症例は10眼でした。
(※病型の内訳は、正常眼圧緑内障が5例、落屑緑内障が4例、原発開放隅角緑内障が1例)

これらの症例では、術前平均眼圧15.2 mmHgに対して、術後平均6.3か月で平均9.8 mmHgまで低下していました。
緑内障点眼薬は術前で平均3.8種類、術後で平均0.5種類でした。


緑内障の視野障害の正確な進行判定には、時間がかかります。 そのため、正常眼圧緑内障の方への手術症例数はまだ少ないですが、平均10 mmHg程度と比較的良好な眼圧コントロールが得られています。

もちろんすべての患者さんで同じ結果になるわけではありませんが、 当院では術後の丁寧な管理も含めて、長期的な眼圧コントロールを目指しています。

8. まとめ


トラベクレクトミーは、現在でも最も強力な眼圧下降効果が期待できる緑内障手術のひとつです。
決して簡単な手術ではありませんが、視野を守るために非常に重要な役割を果たします。


当院では患者様ごとの病状や進行状況を十分に検討し、 必要な場合にはトラベクレクトミーを含めた治療をご提案いたします。




著者情報

十川眼科大町院 院長 中林征吾

医師紹介ページ アクセス
中林 征吾
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医、医学博士
  • 日本眼科学会、日本緑内障学会、日本眼炎症学会 所属

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