オルソケラトロジー(近視進行抑制と視力矯正)
2025.01.22新着情報
オルソケラトロジーは寝ている間にのみ特殊なハードコンタクトレンズをつける治療です。
眼鏡をかけているのと同じような視力の矯正効果が得られます。また多くの研究により、お子様の近視進行を抑制する効果があることがわかりました。
1. 視力矯正と近視進行抑制の原理
2. オルソケラトロジーにかかる当院での費用
3. 当院での検査の流れ・スケジュール
4. オルソケラトロジーを行えない場合や注意点など
5. レンズケアの方法と2年目以降のケア用品にかかる費用の詳細
6. その他
1. 視力矯正と近視進行抑制の原理
寝る前に特殊なハードコンタクトレンズをつけて眠り、角膜という黒目の表面の形を変化させ(表面を平らにします)、光の屈折を変化させて焦点を後ろにずらすことで、眼鏡をかけているのと同じ状態になります。 朝起きてレンズをはずしても角膜の形の変化は一定期間続くため、裸眼での生活が可能です。

就寝前に毎日レンズをつけることで角膜の形の変化はしっかりついてくるため、充血などでレンズ装用をやめてもすぐに視力が極端に下がることはまれです。
しばらくの期間レンズ装用を中止すると角膜形状は少しずつ元の形に戻り、矯正効果はなくなります。逆に言えば、元の状態に戻すことができるため安心です。
日中に装用するコンタクトレンズと比べて夜間の装用になるため、ほこり等が目に入ったりせず、レンズを紛失する心配も減るなど、安全・快適にお使いいただくことができ、リスクは一般のコンタクトレンズと同等またはそれ以下となります。 日中は裸眼で過ごせるため、激しいスポーツ、マリンスポーツなども安全に行うことができます。
2009年に日本の厚生労働省でも認可されております。 当院では6歳からの治療可能としております。成人は何歳まででも行えますが、40歳あたりを過ぎてくるといわゆる老眼症状のために手前が見えにくくなってきます。
近視は、眼球が奥に伸びることで、ピント位置がずれることにより生じます。
成長期の時期(およそ 18 歳くらいまで)は徐々に近視が進行する可能性があります。
近年、お子様の近視の割合や近視の程度が強くなっており、手前のものを見る環境が増えていることが考えられます。
強い近視になると、将来、網膜剥離、黄斑変性、緑内障といった病気にかかるリスクも増えてしまいます。
オルソケラトロジーを行うと、通常のメガネ装用に比べて近視進行を30~60%抑制、平均で半分くらい抑制でき、現在の日本で行える単独治療では最も効果が強いと言われております。オルソケラトロジーにマイオピン点眼を併用することで、近視進行を40~80%程度抑制でき、現在の日本で行える治療では最も強いです。
オルソケラトロジーが近視進行を抑制する原理についてです。
通常の眼鏡やコンタクトレンズで近視を矯正すると、ものを見る最も大事な神経の真ん中の部分の焦点は合います。
しかし目は球体をしており、神経のはじっこの部分では焦点は神経の後ろに合ってしまいます。
これが刺激となって、神経のはじっこのところでも焦点を合わせようとして眼球が奥側に伸びることで、近視進行が進むとする説が有力です。 オルソケラトロジーは、黒目の表面の形を平らに変化させることで、神経の端っこのところにも焦点が合うため、近視進行を抑制できると考えられております。
2. オルソケラトロジーにかかる当院での費用
当院では、初年度のおよそ10回の検査、診察、ハードコンタクトレンズ代金、ケア用品をすべて含んで160,000円(両眼の場合。片眼の場合は100,000円。税込)で行っております(医療費控除の対象)。
初回時(5万円)と2回目(両眼の場合11万円、片眼の場合5万円)にまとまった金額をお預かりしますが、初回から1ヶ月の間に治療中止のご希望があれば、1回あたりの検査・診察代を5,000円とし、残りの金額は返金いたします(レンズは返却いただきますが、レンズ代もかかりません)。 オルソケラトロジー検査の予約日に来れなくなった場合は必ずお電話でご連絡をいただくようお願いします。 連絡なしで予約日にご来院されず、オルソケラトロジーを1ヶ月以内に中止したいとなった場合は、連絡なしの予約日の5,000円分をお返しできない場合があります。
初回時から2ヶ月以内のレンズの度数交換の場合、および6ヶ月以内のレンズを破損した場合は、片眼1回に限りレンズ交換を無料で行います。
2年目以降は年間の費用ではなく、3ヶ月ごとの診察で1回の検査・診察料5,000円(税込)になります。 ハードコンタクトレンズのケア用品代は3ヶ月分で7,500円(2025年1月現在)です。全ての商品をインターネットショップの最安で3ヶ月分として購入すると8,790円となり、それよりも安く設定しました。 2年に一度、ハードコンタクトレンズの耐久性の問題でレンズ交換が必要になります。コンタクトレンズの代金は1枚25,000円になります。
2年目以降は、3ヶ月ごと検査・診察料、ケア用品代、2年に一度レンズを2枚購入とすると、両眼の場合で年間 75,000円の費用となります (2年目以降はその都度、医療費控除用の領収証を発行します)。
オルソケラトロジーは高額ですが、医療費控除の対象となります。 医療費控除で必要となる領収証は、1年目は1ヶ月目に治療継続となったとき、2年目以降はその都度の検査・診察終了時にお渡しいたします。
医療費控除とは: 納税している方とその世帯の方において、1~12月の1年間で(支払った医療費の合計)-(保険金での補填金額)- 10万円 = 医療費控除額 とし、医療費控除額 ✕ 所得税率の金額が確定申告によって戻ってきます(所得税率は、課税所得 195~330万円で10%、330~695万円で20%、695~900万で23%、900~1800万円で33%、1800~4000万円で40%、4000万円以上で45%です)。
3. 当院での検査の流れ・スケジュール
オルソケラトロジーの検査は当院では予約検査となりますのでお電話にてご連絡ください。
また中学生以下の患者様の場合、あるいは視力検査で度数の変動が大きい場合には、オルソケラトロジー検査の前に目が本当に近視なのか、どれくらいの近視があるのかを正確に調べます。 目の中のピント調節を行う筋肉を麻痺させる目薬を使って、検査を行うことがほとんどです。 これは保険診療でできますが、オルソケラトロジー検査は後日になります。まずはご連絡いただければと思います。
また、現在ハードコンタクトレンズを装用している方は、角膜の形を元の状態に戻すため、1ヶ月使用を中止していただく必要があります。
- 初回時:目の適性検査およびトライアルレンズ装用を行います。問題なければ、患者様の目に合った「メニコンオルソK」という角膜矯正用ハードコンタクトレンズの注文を行います(初回時で治療中止される場合は5,000円のお支払い、治療継続の場合は50,000円を預かり金としていただきます)。
- 2回目:届いたお子様用のハードコンタクトレンズを用いて保護者の方による装用練習、レンズのケア方法についての詳しい説明を行います。治療継続をご希望であれば、コンタクトレンズをお渡しして、110,000円(片眼の場合は5,0000円)をいただきます。
- 3回目:自宅で実際に寝る前にハードコンタクトレンズをつけ、翌朝にレンズをはずして受診いただき、目の状態を観察、検査を行います。
- 4回目:1週間後に受診いただき、目の検査、診察を行います。
- 5回目:1週間後に受診いただき、目の検査、診察を行います。初回時からおよそ1ヶ月となり、ここで治療を継続、中止するかを確認いたします。治療継続の場合は医療費控除用の領収証をお渡しします。治療中止のご希望があればレンズを返却いただき、1回の検査・診察料 5,000円 ✕ 5日 = 25,000円はいただきますが、残りの金額は返金いたします(両眼の場合 135,000円、片眼の場合 75,000円の返金)。
- 6、7回目:1ヶ月後に受診いただき目の検査、診察を行います。以降は3ヶ月ごとの通院となります。
4. オルソケラトロジーを行えない場合や注意点など
~ オルソケラトロジーを行えない場合 ~
- 強度の近視、乱視がある:-6.0 D という近視の度数を超えるとオルソケラトロジーはできません。また、強い乱視がある場合もできません(-6Dを超える強い近視でも、乱視が少なければ遠近両用ソフトコンタクトレンズの近視進行の抑制治療があります)。
- 他の病気がある場合:重症のドライアイ、アレルギー性結膜炎があるとオルソケラトロジーは行えません。また、免疫の病気、自己免疫性疾患、糖尿病がある方も行えません。
- 眼感染症がある方、角膜内皮細胞が少ない方:明らかな細菌性の結膜炎、角膜炎などがある方、検査によって異常に角膜内皮細胞(角膜という黒目の内側の細胞)が少ない方はできません。
- 妊娠している方、授乳中の方:妊娠および授乳中の方はホルモンバランスの変化が黒目の形状の変化に影響して視力が不安定になったりするため、オルソケラトロジーは行えません。
~ オルソケラトロジーを行う上での注意点 ~
- レンズ装用後、裸眼視力は徐々に上がる:裸眼視力が安定するまでには、レンズ装用から1~3週間程度かかります。車やバイクなどの運転は、裸眼視力が十分安定してから行ってください。レンズ装用に慣れるまでは、軽いゴロゴロ感、かゆみ、充血、涙が出る、視力が不安定などの症状が出ることがあります。個人差はあるものの、これらの症状は徐々によくなり、1週間程度でなくなることがほとんどです。また、装用を中止すると数日で裸眼視力が低下してきますので、毎晩レンズを装用する必要があります。
- いつもと違う症状時は早めに受診を:レンズを適切に装用していても、角膜上皮障害(黒目の傷など)での痛み、アレルギー性結膜炎でのかゆみ、めやになどの症状が起こるリスクはあります。また、特に夜間で多いですが、光のぎらつき・まぶしさ(グレア)、光のにじみ(ハロー)の症状がでることがあります。自覚症状がなくても、目の定期検査は必ず受けてください。また、いつもと違うめやに、充血、涙が多く出る、ゴロゴロする、見えにくいなどの異常を感じたときや、レンズの破損に気がついたときはただちにレンズ装用を中止し、速やかに受診してください。
- レンズの消毒の徹底:レンズやケア用品の取り扱いを誤ると、目の障害につながることがあります。頻度はまれですが、細菌やアメーバなどによる角膜感染症という重症な合併症がおこると、視力障害の後遺症が残ったりすることもあります。レンズケアについて、界面活性剤によるこすり洗いに加え、感染を予防する観点からポビドンヨード剤による消毒が推奨されており、当院でもその両方の使用を行っていただいております。レンズケースは中和剤除去のため、水道水で洗浄・すすぎをして、しっかりと乾燥させてください。レンズケースも定期的な交換が重要です。わからないことがあれば医師やスタッフに確認してください。
- レンズについて:眼科で検査を行い、現在のレンズが装用不適切と判断した場合は、その指示に従ってレンズを交換してください。また、通常のコンタクトレンズ販売ではないため、オルソケラトロジー終了時はレンズを返却いただく必要があります。コンタクトレンズを他人に貸したり、あげたりすることはできません。また、病気や事故などで長期にわたり眼科を受診できない場合には、レンズ装用を中止してください。
- 運転免許証、パイロット:オルソケラトロジーを行っている人は、運転免許取得、更新時の視力検査に裸眼で合格しても、運転免許証は「眼鏡等」の条件付きとなります。免許のための視力検査時には、オルソケラトロジーレンズを使用している旨を検査担当者に申告する必要があります。またパイロットの方に裸眼視力の条件はない(メガネで矯正視力が出れば可)ですが、オルソケラトロジーを装用しての裸眼視力矯正は認められておりません。
- 老眼の症状:40歳頃から老眼の症状がはじまるため、近くが見えにくい、眼精疲労の原因になる場合があります。
- オルソケラトロジーを行っていることの申告:何らかの症状や病気で他の眼科を受診した際には、オルソケラトロジーを行っていることを申告してください。
5. レンズケアの方法と2年目以降のケア用品にかかる費用の詳細

- 寝る前にレンズをつけるとき
レンズをつける人の爪が短いことを確認します。長ければ切りましょう。手はよく洗います。
レンズケースのふたをはずします。レンズをホルダーに入れたまま、レンズを水道水で十分にすすぎます。水流が強すぎるとレンズがホルダーからはずれるおそれがあるため注意してください。水道水ですすぎ洗いをするとき、洗面所の栓は必ずしてください。ホルダーからレンズをはずしてO2ケア アミノソラでレンズを丁寧にこすり洗いをした後、再び水道水でレンズを水洗いをします。 人差し指にレンズをのせ、メニコンフィットの液を1滴たらして、レンズを黒目に装着します。
レンズホルダーは水洗いをして、清潔な場所で自然乾燥してください。

- 朝にレンズをはずすとき
手をよく洗います。SPスポイトを使ってレンズを目からはずします。 SPスポイトの緑色の部分を持ってレンズを吸着させたのち、やや下方に引くようにして目からレンズをはずします。 目からとれたレンズ(まだSPスポイトにくっついた状態)を別の手の人差し指と親指で持ち、SPスポイトの白色の部分を押して、SPスポイトからレンズをはずします。SPスポイトは水洗いをして自然乾燥させます。
SPスポイトの詳しい使い方は、メニコンのサイトの「SPスポイトの使い方動画」をご覧ください。
レンズは水道水で軽くすすいだのち、O2ケア アミノソラで丁寧にこすり洗いをします。水道水でぬめりがなくなるまで十分にすすぎ洗いをします。水道水ですすぎ洗いをするとき、洗面所の栓は必ずしてください。
レンズケースのふたのホルダーにレンズをはめます。クリアデューSLの錠剤1錠と液剤をケースの9分目まで入れます。ケースのふたをしめてそのまま4時間以上放置します。

- 2週間に1回のお手入れ(タンパク除去)
手をよく洗います。レンズを「O2ケア アミノソラ」でこすり洗いをして、水道水でよくすすぎます。 プロージェントのバイアル(専用容器)のキャップホルダーにレンズをセットします。
バイアルにA液とB液を入れて、キャップをしめます。バイアルを2~3回軽く振って液を混ぜたら(2つの液が混ざると黄色くなります)、そのまま30分放置します。
レンズを目に装着する場合は、「O2ケラ アミノソラ」でこすり洗いした後、水道水で水洗いをしてからレンズを目につけてください。
プロージェントでタンパク除去をしたのち、クリアデューSLの消毒を行って4時間以上放置しても良いです。
~ 使用するケア用品 ~

- O2ケア アミノソラ
メニコン社のハードコンタクトレンズ用酵素洗浄保存液。タンパクと脂質の洗浄効果、さらに抗菌成分も配合。洗浄液であり、点眼、服用はできません。
「O2ケア アミノソラ」溶液をレンズケースに9分目まで入れて4時間以上放置することで、保存液としても使えますが、当院ではより強力な消毒効果をもつ「クリアデューSL」溶液での消毒、保存を行っていただいております。 そのため、「O2ケア アミノソラ」溶液は主にレンズのこすり洗い用として用います。
「O2ケア アミノソラ」ですすぎ洗いをしたら、レンズケースのホルダーにレンズをはめて水道水で5~10秒ほどすすいでから目に装着してください。
オルソケラトロジー治療の2年目以降、当院ではメニコン O2ケア アミノソラ(120ml) 1本800円です。
参考:1本での販売は Amazon で 804円が最安です(2025年1月時点)。病院ではO2ケア アミノソラ 2本パックは取り扱いしておりません。

- クリアデューSL
オフテクス社の酵素洗浄保存液。細菌、ウイルス、アメーバまでを消毒成分「ポビドンヨード」で殺菌します。ポビドンヨードとはイソジンうがい液にも入っている成分で、微生物やウイルスなどの病原体を除去します。
2017年に作成されたオルソケラトロジーガイドライン(第2版)でも、細菌やアカントアメーバによる角膜炎の発症を抑えるために、界面活性剤によるレンズのこすり洗いに加え、ポビドンヨード剤による消毒を推奨しています。
クリアデュー製品の中で、ポビドンヨードが入っているのは「クリアデュー ハイドロワンステップ」「クリアデュー O2」「クリアデューSL」の3つです。 とくに、「クリアデューSL」は、オルソケラトロジーレンズ専用の溶液であり、目にしみにくくなっています。
液はオレンジ色ですが、レンズケースに溶液と錠剤を入れて4時間たつ頃には無色になっています。 レンズやレンズケースに対して優れた殺菌、洗浄効果を持ちます。
寝る前にレンズを目に装着するときは、上に書いてあるように水道水によるすすぎ、O2ケア アミノソラによるこすり洗い、メニコンフィット液をつけてください。
クリアデューSLは眼科の病院でしか売っていません (しかし、インターネットで検索すると、最も安いもので1本1000円程度で売られていたりします)。
オルソケラトロジー治療の2年目以降、当院ではオフテクス クリアデューSL 1本800円です。

- プロージェント
メニコン社のタンパク洗浄液。コンタクトレンズを装用していると、涙液中のタンパク、脂質、カルシウムなどの汚れがレンズに付着します。そのままにしておくと、矯正効果が弱まる場合があります。 通常のハードコンタクトレンズの場合は1ヶ月に1回の洗浄ですが、オルソケラトロジーレンズの場合は2週間に1回を目安に使用してください。
オルソケラトロジー治療の2年目以降、当院ではメニコン プロージェント 7pairs 1箱800円です。
参考:インターネットでは たくさん購入して送料無料となっても 1,120円が最安です(2025年1月時点)。
また感染予防のためバイアルは6ヶ月ごとの交換を推奨しております。
