先発医薬品を希望された場合の自己負担について
2025.01.14新着情報
2024年10月から全ての病院と薬局で、先発医薬品(長期収載品)の選定療養がはじまっております。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)が存在する先発医薬品の一部において、患者様自身が先発医薬品を希望される場合は、後発品の中で最も高いお薬と先発品のお薬の差額の1/4の金額を追加でご負担いただくことになります。
この自己負担金額のことを厚生労働省は「特別の料金」と呼んでいます。
なお、当院は院内処方はしておりませんので、薬局でのご負担になります。
1. 先発医薬品、後発医薬品とは
2. 選定療養とは
3. 医薬品の選定療養の例外
4. 選定療養となる点眼薬の具体的な金額例
5. 選定療養となる点眼薬の一覧
6. 「特別の料金」は医療費控除の対象
1. 先発医薬品、後発医薬品とは
先発医薬品(せんぱついやくひん)とは、ある有効成分のお薬で一番最初に開発・承認・発売された医薬品です。
薬の開発には長い年月と膨大な費用がかかるために特許が与えられます。
特許期間中はその製薬会社のみが製造、販売できます。
開発に膨大な費用がかかっているため、先発医薬品の価格は高く設定されます。
ちなみに保険診療でお薬の価格は厚生労働省によって決められており、全国一律で同じです。健康保険に加入していれば、患者様の自己負担は1~3割ですみます。
先発医薬品の特許期間が切れると、他の製薬会社が同じ有効成分のお薬を製造、販売することができるようになります。
このお薬のことを後発医薬品(こうはついやくひん、ジェネリック医薬品)といいます。
先発医薬品よりも開発費用が安くすむため、お薬の価格も先発医薬品よりも安くすみます。
後発医薬品は主成分は同じですが、点眼薬であれば添加物が多少ちがうことがあります。
2. 選定療養とは
選定療養(せんていりょうよう)とは、患者様の希望・選択により保険適用外の治療を保険診療の治療と合わせて受けることができる制度です。
選定療養の例として、大きな病院の初診や入院の際の個室、歯科での虫歯の治療で保険適用外の素材を使う、眼科での白内障手術で多焦点眼内レンズを使う、などがあります。
そして、後発医薬品が存在する先発医薬品の一部において、先発医薬品を患者様が希望される場合、後発品の中で最も高いお薬と先発品のお薬の差額の1/4の金額を、保険診療外の選定療養として2024年10月から患者様にご負担いただくように厚生労働省が決定しました。
後発医薬品が発売されてから5年が経ち、後発医薬品の使用割合が50%を超えている先発医薬品が対象となります。
国の医療費は年々増加しており、とくに保険診療の7~9割分を国が負担しているため、価格が安い後発医薬品の使用を促すことによって国の医療費を抑えるのが目的です。
3. 医薬品の選定療養の例外
先発医薬品を処方・調剤する医療上の必要がある場合等は、特別の料金は要らないとなっております。
具体的には、後発医薬品を使うと副作用が出た、先発医薬品の生産が一時的に中止されているなどです。
後発医薬品は有効成分は全く同じですが、添加物などの成分が先発医薬品と多少異なることがあります。 そのため、内服薬であれば「味」、点眼薬であれば「使用感、さし心地」は変わることがあります。
厚生労働省はこれらの使用感などの違いなどで先発医薬品を希望される場合、「特別の料金」を支払うようにとしています。
4. 選定療養となる点眼薬の具体的な金額例
具体的に眼科の点眼薬での選定療養の例を出してみます。
ドライアイの治療薬にヒアルロン酸ナトリウムという成分があります。
先発医薬品の「ヒアレイン点眼液0.1%」の薬価は1本あたり245.4円です。
この点眼液は医薬品の選定療養の対象であり、後発医薬品で最も高いお薬の薬価は1本あたり188.8円です。
医療で支払額を計算する場合に点数というものが用いられ、1点=10円です。
計算が少しややこしいのですが、お薬の値段はまず薬価を1/10の点数にしてから小数点以下を五捨五超入(0.5は0に、0.51は1に)し、再び10倍して円に戻すというルールがあります。
まず従来のお薬の自己負担額を計算してみます。
ヒアレイン点眼液0.1%は 245.4円 = 24.54点、小数点以下を五捨五超入して25点、10倍して円に戻すので1本250円になります。
保険診療であればこれに自己負担割合(1~3割)をかけるため、ヒアレイン点眼液0.1%のお薬代の自己負担は、 自己負担1~3割でそれぞれ25円、50円、75円となります。
後発医薬品で最も高いものは 188.8円 = 18.88点、小数点以下を五捨五超入して19点、そのため1本190円になります。
自己負担1~3割でそれぞれ19円、38円、57円となります。
では、この先発医薬品であるヒアレイン点眼液0.1%と後発医薬品の差額の1/4を計算してみます。
(245.4 - 188.8)/4 = 14.15円
これを点数にすると1.415点、小数点以下を五捨五超入して1点、10倍して円に戻して10円。
「特別の料金」には消費税がかかるため、1.1倍して 10円 * 1.1 = 11円になります。
最後に、薬局での先発医薬品を希望した場合のお薬代を計算してみます。
先発医薬品の選定療養の場合、「特別の料金」分を控除することができます。
先発医薬品であるヒアレイン点眼液0.1%のお薬代は、1本 245.4円から特別の料金 14.15円を控除した(引いた)
245.4 - 14.15 = 231.25円になります。
これを点数にして23.125点、小数点以下を五捨五超入して23点、そのため1本230円となります。
よって、お薬代金は、
1割の自己負担で、230 * 0.1 = 23円、これに特別の料金 11円を足して 23 + 11 = 34円。
2割の自己負担で、230 * 0.2 = 46円、これに特別の料金 11円を足して 46 + 11 = 57円。
3割の自己負担で、230 * 0.3 = 69円、これに特別の料金 11円を足して 69 + 11 = 80円。
従来の先発医薬品の代金が1~3割でそれぞれ25円、50円、75円でしたので、1~3割負担の患者様でそれぞれ1.36倍、1.14倍、1.07倍のお薬代となります。
選定療養分には保険割合が効かないため、1割の方の増額分が最も大きくなります。
もし後発医薬品(最安の薬価は1本あたり94.5円)であれば自己負担1~3割でそれぞれ 9円、18円、27円となります。
先発医薬品を希望すると後発医薬品に比べて、3.78倍、3.17倍、2.96倍になります。
今回のヒアレイン0.1%点眼液の場合は、先発医薬品と後発医薬品で最も高いものの差額がそこまで大きくないのでこの程度です。
しかし、その差額が大きい、例えばコソプト配合点眼液(緑内障の治療のめぐすり)の場合だと、
コソプト配合点眼液の薬価(1本 1838.5円)と後発医薬品で最も高いお薬の薬価(624.5円)
特別の料金 = (1838.5 - 624.5)/4 = 303.5円 = 30点 = 300円に消費税 1.1倍で 330円。
自己負担1割だと 153円 +330円 = 483円(従来は184円だったため2.63倍)
自己負担2割だと 306円 +330円 = 636円(従来は368円だったため1.73倍)
自己負担3割だと 459円 +330円 = 789円(従来は552円だったため1.43倍)
もし後発医薬品であれば自己負担1~3割でそれぞれ 62円、124円、186円となります。
先発医薬品を希望すると後発医薬品に比べて、7.79倍、5.13倍、4.24倍になります。
このように、先発医薬品を希望した場合、2024年9月までよりもかなり自己負担が多くなってしまうことがあります。
5. 選定療養となる点眼薬の一覧
2025年1月の時点で、選定療養となる点眼薬の一覧です(かっこ内は1本あたりの特別の料金)。
アイファガン点眼液0.1% (242円)
アレギサール点眼液0.1% (55円)
アレジオン点眼液0.05% (165円)
エイゾプト懸濁性点眼液1% (132円)
オルガドロン点眼・点耳・点鼻液0.1% (22円)
キサラタン点眼液0.005% (88円)
クラビット点眼液0.5% (44円)
クラビット点眼液1.5% (44円)
コソプト配合点眼液 (330円)
ザジテン点眼液0.05% (33円)
ザラカム配合点眼液 (264円)
サンコバ点眼液0.02% (0円)
サンテゾーン点眼液0.02% (0円)
サンテゾーン点眼液0.1% (22円)
ジクロード点眼液0.1% (22円)
チモプトールXE点眼液0.25% (66円)
チモプトールXE点眼液0.5% (121円)
チモプトール点眼液0.25% (22円)
チモプトール点眼液0.5% (66円)
トラバタンズ点眼液0.004% (143円)
トラメラスPF点眼液0.5% (33円)
トラメラス点眼液0.5% (33円)
二プラノール点眼液0.25% (33円)
二フラン点眼液0.1% (0円)
ハイパジールコーワ点眼液0.25% (110円)
パタノール点眼液 (55円)
ヒアレイン点眼液0.1% (11円)
ヒアレイン点眼液0.3% (33円)
フルメトロン点眼液0.1% (22円)
ブロナック点眼液0.1% (55円)
ベガモックス点眼液0.5% (55円)
ミケランLA点眼液1% (66円)
ミケランLA点眼液2% (99円)
ミケラン点眼液1% (77円)
ミケラン点眼液2% (77円)
ミドリンM点眼液0.4% (0円)
リザベン点眼液0.5% (33円)
リズモンTG点眼液0.25% (55円)
リズモンTG点眼液0.5% (88円)
リボスチン点眼液0.025% (44円)
リンデロン点眼・点耳・点鼻液0.1% (33円)
ルミガン点眼液0.03% (220円)
レスキュラ点眼液0.12% (44円)
5. 「特別の料金」は医療費控除の対象
医薬品の選定療養における「特別の料金」は医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、納税している方とその世帯の方において、1~12月の1年間で(支払った医療費の合計)-(保険金での補填金額)- 10万円 = 医療費控除額 とし、医療費控除額 ✕ 所得税率の金額が確定申告によって戻ってきます(医療費控除額は上限が200万円です。
所得税率は、課税所得 195万円未満で5%、195~330万円で10%、330~695万円で20%、695~900万円で23%、900~1800万円で33%、1800~4000万円で40%、4000万円以上で45%です)。
医療費控除の申告においては、「特別の料金」にかかる領収証を保存し、「特別の料金」の明細書の作成が必要になると、国税庁のウェブサイトに記載があります。
国税庁の該当ページはこちら